飛行機の見える窓から

空港に程近い郊外の街から、日々の暮らしでオススメしたいモノ コトについて発信しています。

「フーガはユーガ 伊坂幸太郎」を読んで

オススメの本を幅広く紹介するブログを作りたい!と思ったのに、

次々に思いつく作品は伊坂幸太郎さんの作品ばかり。「幅広く」とはなんとも難しい。

 

この作品は、双子の主人公「優我」と「風我」の二人がテレポーテーションで入れ替わるファンタジー性の強い作品である。

完全に引き込まれた私は、自分まで夢の中でテレポーテーションしてしまった。(余談 笑)

 

 

一年間で誕生日の1日だけ、2時間毎に二人の身体は入れ替わる。

 

まるで神様からの誕生日プレゼントの様な、この不思議な現象も、幼少期に父親から受けた虐待をキッカケに始まる。

 

物語は、双子の兄 常盤優我が仙台市内のファミリーレストランで、東京から来たフリーのディレクターを名乗る男 高杉のインタビューに答えていく形で進行していく。

 

二人の育った家は、日常的に暴力をふるう父親と、子どもに無関心で半ば育児放棄の母親、「優我」と「風我」の4人家族で、幸せな家庭とは程遠いものだった。

その日も母親の長い外出の合間に、父親に殴られている自分の分身と「代わってあげたい!」と強く念じる気持ちが形となり、二人は初めての「入れ替わり」を果たした。

辛い子ども時代を過ごした二人だが、その後も誕生日の度に「アレ」はやってきた。

二人は「アレ」の特性を研究し、青春時代に突入する頃には「アレ」を応用して、いじめられる友人を助けるまでに使いこなしていた。

 

少しのネタバレをすれば、二人が成長し大人になっていく過程の中で、こんなにひどい事があるだろうかと思うシーンがいくつかある。

伊坂さんの作品の特徴とも言えるところだが、どれほど暗く痛ましい内容でも、ムダなくフラットでシュールに描く。

この作品の登場人物たちも良くも悪くも人間らしい心を持ち、真面目すぎず、ズルすぎず、優しすぎない。

 

成長した二人が経験する出会いや別れ、人を愛し慈しむ気持ち、悲しみや抑えきれない怒り…

そして事態は全く想像していなかった方向に進んでいく…?!

 

最高に切なくて優しいヒューマンファンタジー

ぜひ読んでみてください。

 

 

“僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。”

      ー「フーガはユーガ」帯より引用ー