飛行機の見える窓から

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「地面師たち 新庄耕」を読んで

「地面師」と聞いて、2017年に発生した「積水ハウス地面師詐欺事件」を思い浮かべる人も多いだろう。

 

地面師とは、土地の所有者になりすまし、他人の土地を売買して、金銭をだまし取る詐欺師のこと。

ニュース番組から流れる情報に、こんな映画のようなことが起こり得るのかと感じたものだったが、本作品は実際におきたこの事件を軸として構成されており、地面師たちの手法を間近に垣間見ることが出来る。

あまりのリンクするシーンの多さに、「あれ?ノンフィクションだっけ?」と思ってしまうほど忠実に再現されているが、

主人公 拓海を筆頭に登場人物たちが繰り広げる詐欺の手口は、華麗とも呼べる鮮やかさで、文章全体から受ける印象は非常に物語的である。

 

登場人物の一人で、過去にこの事件の首謀者でもある大物詐欺師ハリソン山中を、一度は捕らえたものの、嫌疑不十分で不起訴処分となり釈放せざるを得なかったという苦い経験を持つ、定年を間近に控えた刑事 辰の存在もドラマ性に色を添えている。

 

拓海の抱えた悲しい過去や、それにまつわる父の思い。

まるで心を失ったかのような拓海に、新たな友人と呼べる存在が現れる時。

実際の事件をモチーフに、見事にドラマティカルなストーリーが融合されており、ダイナミックな印象となった本作品は、まるでハリウッドのスパイ映画を見ているかのような興奮を与えてくれる。

アンダーグラウンドな世界で繰り広げられる、唯一無二な地面師ストーリー。ぜひ読んでもらいたいオススメの一冊だ。